日航再生、問われる実行力(日本経済新聞2010/02/02)
企業再生
日航再生、問われる実行力
日本航空の新会長に就任した稲盛和夫京セラ名誉会長は1日の記者会見で、人員削減などのリストラについて「避けて通れないのであれば、全社員に訴えて協力してもらう」と語った。再建を主導する公的機関の企業再生支援機構と協力し、3年以内の再建を目指す。ただ日航再建には航空行政など複雑な要因も絡む。稲盛会長は迅速なリストラ実行と収益力の強化という重い課題を背負う。
リストラ、社員に訴え
稲盛会長、具体策は示さず
日航は3年で1万5000人超の削減を計画
日航は今後3年間でグループ人員1万5000人超の削減を計画している。稲盛氏は人員削減について「本当に悲しいこと」と述べたが、具体的な削減手法や時期などは明らかにしなかった。路線整理について新社長に就いた大西賢氏は「規模の縮小は国内・国際線とも実施するのが前提」としたが、対象路線などは明らかにせず、機材の小型化などの時期も示さなかった。
会長と社長との役割分担について大西社長は「(再建計画を進める)実行部隊は我々が担当し、稲盛会長は精神的な支えになる」と語った。7月をめどに提出する更生計画づくりを主導するのは機構と機構から送り込まれた管財人が中心。機構などは稲盛会長に権限を事実上委任する方針だが、日航内部からは「権限や役割の分担が不明」との声も漏れる。
機構と日航が作成した再生計画について稲盛会長は「楽観的な意見も入っているのだろう。詳細に調べて正確に計画を練り上げていきたい」として一部見直す考えを示した。国際線からの撤退は否定したが、更生計画づくりでは赤字路線の撤退は不可欠。一方で今後、空港を抱える自治体や政治家、政府などとの調整も必要になり、稲盛会長の決断力が試される。
リストラの具体的な実施計画と3年後の日航の企業像をどう描くのか。日航は2013年3月期に売上高を約1兆3585億円、営業利益を約904億円にする青写真を描くが、1日の会見では具体的な実行スケジュールは見えなかった。金融機関による債権放棄など財務リストラが先行しても、痛みを伴う明確な更生計画を作り、それを断行しなくては日航再生はおぼつかない。
日航のガバナンス
日航の主な再生計画案
稲盛・大西氏会見の一問一答
再建は十分可能/「親方日の丸」体質と決別
日航の稲盛和夫新会長と大西賢新社長の記者会見の内容は以下の通り。
稲盛会長「私は航空業界についてはまったくの素人。ただ(企業再生支援)機構とJAL(日航)の方々が一緒になって作成した事業再生計画を確実に実行すれば再建は十分可能だ」
大西社長「当社は半官半民企業でスタートし、その後民営化したものの『親方日の丸』の体質を引きずっている部分もある。過去と決別し、再生のための最後のチャンスを社員全力でやりぬく」
――路線整理は。
稲盛会長「不採算でも飛ばさなければならない路線はある。経営体力が許す限りは公共性も重視したい」
――外国航空会社との提携の行方は。
稲盛会長「先週着任し4日しか会社に来ていないが、アライアンスの件は社内でもずっと検討してきたようだし、相手方の会社からもアプローチがあり、早く決断しなければと聞いている。具体的には話せないが、なるべく早く実現したい」
――国際線の撤退の可能性は。
稲盛会長「国際線のないJALはイメージがわかない。特に海外で働いている人はそうだろう。私が初めて海外に行ったのもJAL便だし、国際線をなくすことはイメージできない。国内・国際線ともに発展していくような運営をしていく」
――1万5000人超の人員削減策は。
稲盛会長「私の京セラ50年の経営の歴史でも、またKDDI経営の27年の歴史の中でも社員の首切りをしたことは一回もないので若干戸惑っている。確かに日航が2000億円を超える赤字を出しているのは尋常な状態ではない。人員削減が再生に避けて通れないことなら本当に悲しいことだが、全社員に訴えて協力してもらう以外にない。その問題は私の胸を大きく締め付けている」
――パイロットの高額給料の問題や組合の問題にどう対応するか。
稲盛会長「まだ組合の人にも会っていないが、交渉は人間の誠意に尽きると思っている。奇策も持っていないが、誠実に厳しい現実を見てもらい協力をお願いするほかに方法はない」
神戸空港の店舗、日航撤退で閉鎖、JALUX
双日と日本航空が出資するJALUXは神戸空港の空港店舗「BLUE SKY」を閉店することを決めた。同空港は5月末に日本航空が全面撤退する方針を表明した。同空港の店舗は2006年の開店以来、赤字が続いている。日航便が就航しなければさらに収益が悪化すると判断した。日航の会社更生法の申請を受け、日航系企業の事業にも影響が出てきた。
神戸空港では5月に羽田、新千歳、那覇、石垣(沖縄)の日航全4路線が撤退となる。JALUXは日航便の撤退後は「JALカード」の会員向け割引利用者の需要が期待できないため、店舗存続の是非を検討した。
JALUXは日航便が発着する空港で「BLUE SKY」などの名称で空港店舗を96店展開。客数は前年を1割前後下回る水準が続いている。
JAC社長に安嶋氏が昇格
日本航空グループの日本エアコミューター(JAC、鹿児島県霧島市)は1日、同日付で大西賢社長が日航の社長に就任したことに伴い、安嶋新取締役(52)が社長に昇格したと発表した。
安嶋 新氏(やすじま・あらた)81年(昭56年)早大政経卒、日本航空入社。09年日本エアコミューター事業企画部長兼営業部長。同年取締役。東京都出身。
2010年02月02日